触診の練習を一人で続ける方法:硬さの差を「言葉にする」3つの手順
触診は、セミナーで講師に手を直してもらうのが一番早い。これは事実です。しかし、次のセミナーまでの数週間を何もせずに過ごすと、当日に直してもらったことも抜けていきます。この記事は、一人の時間にできる触診の練習を3つの手順にまとめたものです。
目標は「硬いところを見つける」ではなく、硬さの差を言葉にできることです。言葉にできた所見は、人に伝えられ、後で確かめられます。
手順1:左右を同じ手順で触り、差を一文で書く
最初の練習は、自分の体でも家族でも構いません。同じ筋を、同じ手順で、左右を触ります。そして差を一文で書きます。
例として後脛骨筋の腱を使います。藤井翔悟の膝痛の指導動画では、触り方をこう説明しています。「内果(内くるぶし)の骨の真ん中から下をなぞると、グリッとした腱がある。そこを持ってグッとした時に、ここがふわっと緩む」(出典1)。
この手順を左右で行い、次のように書きます。
- 右:腱の位置はすぐ分かる。押すと硬く、抵抗が強い
- 左:腱は分かるが、右より細く感じる。押しても抵抗が弱い
「硬い」だけでは練習になりません。どう硬いか(抵抗が強い、動かない、張っている、押し返してくる)を自分の語彙で書くことが練習です。語彙が増えるほど、手で感じ分けられる差も増えます。
よくある失敗
- 片側だけ触って「硬い」と決める(比較がないと差は分かりません)
- 触る位置が左右で違う(骨の目印から同じ距離で触ります)
- 強く押しすぎて、筋ではなく圧痛を見ている(押す強さも左右で揃えます)
手順2:緩む手応えを、自分の手と相手の自覚の両方で確かめる
触診の次は「変化を感じ取る」練習です。同じ動画で講師は、受講者に腱を持たせたまま「緩んできました」「緩んでいくで」と手応えの変化を確認させ、分からない受講者には「分からんかったら、もっと手を突っ込んで内側に行こう」と位置を変えさせています(出典1)。
一人で練習するときは、次の順で行います。
- 手順1で「硬い」と書いた側の腱を持つ
- 持ったまま、足関節をゆっくり動かしてもらう(自分の体なら自分で動かす)
- 手の下の抵抗が変わった瞬間に「今、変わった」と声に出す
- 相手がいれば「今、何か変わった?」と聞き、一致したかを記録する
手応えが分からないときは、位置を変えます。同じ場所を強く押し続けるのではなく、骨の目印からの距離や角度を少しずつ変えて、抵抗が最も強い場所を探します。これが「もっと手を突っ込んで内側に行く」の意味です。
手順3:記録して翌日に比べる
触診が上達したかどうかは、その場では分かりません。記録を残して、翌日、翌週に同じ場所を触って比べます。
記録は3行で足ります。
| 日付 | 場所 | 所見(一文) |
|---|---|---|
| 10/19 | 右 後脛骨筋腱(内果の下) | 押すと抵抗が強い。動かすと腱が指の下で滑らない |
| 10/20 | 同 | 昨日より抵抗が弱い。滑るのが分かる |
翌日に「同じ場所を同じ手順で触れたか」が最初の確認点です。同じ場所を再現できなければ、所見の変化は比べられません。再現できるようになると、変化が見えてきます。
一人の練習で足りないもの
ここまでの3手順は、一人で続けられます。ただし、次の2つは一人では確かめられません。
- 自分の「硬い」が、他の人の「硬い」と同じかどうか
- 触る位置そのものが正しいかどうか
これは、同僚や勉強会の仲間、セミナーの講師に同じ場所を触ってもらい、所見を突き合わせる以外に方法がありません。一人の練習は「人に直してもらう前の準備」であり、代わりにはなりません。
逆に言えば、手順1〜3を続けている人は、人に直してもらったときの吸収が速くなります。自分の所見が言葉になっているので、どこがずれていたかがその場で分かるからです。
まとめ
- 左右を同じ手順で触り、差を一文で書く
- 緩む手応えを、手と相手の自覚の両方で確かめる。分からなければ位置を変える
- 記録して翌日に比べる。同じ場所を再現できることが最初の到達点
学ぶ順番の全体像は、前の記事「筋膜リリースを学ぶ順番」(出典2)にまとめています。触診は第2段階です。第1段階の解剖(対象の筋の走行と起始停止を言えること)を先に済ませておくと、触る位置の再現が楽になります。
- 藤井翔悟「膝の痛み」指導動画の文字起こし(後脛骨筋の腱の触り方、緩む手応えの確認、「分からなければもっと手を突っ込んで内側へ」の指導):株式会社藤井翔悟事務所 内部資料
- 当サイト「筋膜リリースを学ぶ順番」 https://chiryoka-manabi.pages.dev/kinmaku-manabu-junban/