PR:このサイトは株式会社藤井翔悟事務所が運営し、当社のセミナー・講座を紹介しています。

筋膜のつながりを患者にどう説明するか:「体の地図」を断定に変えない5つの手順

2026-11-05 | Q&A

筋膜のつながりを患者に説明するとき、最初から「腰痛の原因はお尻です」と言い切る必要はありません。図を見せながら伝えるべきなのは、患部以外にも確認する候補があり、その候補を体の反応で一緒に確かめるという方針です。

小冊子『疼痛治療テンプレート』のSECTION 1では、筋膜のつながりを「体の地図」と表現し、施術前に図を見せて説明する流れを紹介しています(出典1)。地図は、患部だけに視野を狭めないために役立ちます。一方で、地図に線があることと、目の前の患者の症状にその線が関係していることは別です。

この記事では、筋膜の図を説明に使いながら、断定を避け、患者と評価結果を共有する手順を整理します。対象は、説明に迷いやすい臨床経験の浅い理学療法士・柔道整復師・鍼灸師・整体師です。

結論:筋膜の図は「原因図」ではなく「候補を探す地図」として使う

筋膜のつながりを説明する目的は、専門用語を教えることではありません。患部から離れた場所を評価する理由と、これから何を確かめるかを患者が理解できる状態にすることです。

説明の役割を、次の三つに分けると混乱しません。

説明すること患者と共有する内容まだ言わないこと
体の構造筋やその周囲の結合組織は、隣り合う組織と連続している図にある経路が症状の原因だという断定
評価の方針痛む場所だけでなく、動きに関係しそうな場所も確認する離れた場所を触れば結果が出るという約束
現時点の所見どの動作で何が起き、条件を変えるとどう変わったか一度の反応だけで組織や病態が確定したという判断

「体の地図」という比喩は、この三つを短く伝えるために使います。地図には複数の道があります。しかし、実際にどの道が関係しているかは、現在地と動きを調べなければ分かりません。この前提を一言添えるだけで、図が断定の道具になるのを防げます。

患者には、次のように伝えられます。

この図は、痛みの原因を決める図ではなく、確認する場所を探す地図です。今からいつもの動きを見て、関係しそうな場所を一つずつ確かめます。

この説明なら、患部以外を評価する理由を伝えつつ、まだ仮説の段階であることも共有できます。

「筋膜」と「全身のつながり」を分けて話す理由

患者説明の前に、施術者側の言葉をそろえておきます。日本整形内科学研究会は、筋膜を、個々の筋線維、筋、筋群を包み、それらを分けたり連結したりする線維性組織と説明しています。また、全身の臓器を包む線維性の立体網目状組織であるファシアは、筋膜より広い概念だと整理しています(出典2)。

臨床では「筋膜」という言葉を広い意味で使う場面があります。ただし、患者に説明するときに細かな用語の違いから始めると、本来の目的が見えにくくなります。最初は「筋肉やその周りの組織は、隣の組織と連続しています」までで十分です。

注意したいのは、解剖学的に連続しているという事実から、個別の症状の原因まで一気に進まないことです。筋膜に関する教育講演でも、「筋膜」という名称が異なる構造を指して使われる問題が示され、解剖学の共通用語に沿って議論する必要性が提言されています(出典3)。

したがって、説明は二段階に分けます。

  1. 構造の説明:筋や周囲の組織は連続している
  2. 個別の仮説:その連続性が、この患者の動きや症状に関係するかを調べる

一段目は一般的な解剖の話です。二段目は目の前の患者についての話です。この二つの間には評価が要ります。「つながっているから、ここが原因です」ではなく、「つながりがあるため候補に入れます。関係するかは動きで確認します」と伝えます。

この言い分けは、患者への配慮だけではありません。施術者自身が、知識と所見を混ぜないためにも役立ちます。

次の一歩を、無料で確かめる

LINEに登録すると、筋膜リリース徒手療法の無料動画と、セミナーの最新日程が届きます。合わなければブロックで解除できます。

LINEで無料動画を受け取るセミナーの日程を見る

説明の前に「観察・仮説・確認」を一行ずつ用意する

図を見せる前に、施術者が三行のメモを作ります。書くのは、観察、仮説、確認方法です。

腰を前に曲げると症状が出る人を例にします。

観察には、見たことと患者が話したことだけを書きます。「硬いから腰に負担がかかっている」は、観察ではなく解釈です。仮説には「可能性がある」「候補にする」と書きます。確認には、何を変えて、どの動作をもう一度見るかを書きます。

この三行がないまま説明を始めると、図に合わせて話を作りやすくなります。反対に、三行があれば、患者に伝える内容も短くなります。

区分患者への言い方避けたい混ぜ方
観察前に曲げる途中で症状が出て、骨盤の動きが小さく見えました骨盤が悪いので腰が痛いです
仮説お尻や骨盤周りの動きが関係するかを調べます原因はお尻の筋肉です
確認ここに軽く触れた状態で、同じ動きを比べますここを押せば変わります

小冊子では、筋膜のつながりの図を見せた後、評価へ進む構成になっています(出典1)。実務ではさらに、図を「正解の一覧」ではなく「仮説の候補表」として扱うと、説明と検証をつなげやすくなります。

また、評価で反応が変わっても、押圧した組織だけが変化を生んだとは限りません。触れられたことで動作速度が変わる、注意の向きが変わる、動き方を意識する、といった別の要素も入り得ます。そのため、一度の反応は候補の優先度を上げる材料として扱います。

患者説明は5つの手順で短く組み立てる

説明は長いほど納得につながるわけではありません。患者が知りたいのは、自分の体で何が観察され、何のためにどこを確認するのかです。次の順で話すと、一般論から個別の評価へ移れます。

手順1:患者の言葉と動作から始める

最初に、患者が困っている動作を確認します。「腰痛について説明します」ではなく、「靴下を履くために前へ曲げる途中で、腰の右側が気になるのですね」と、本人の言葉と動作を結びます。

ここで場所、動作、出始めをそろえます。説明の基準点が患者の訴えになるため、あとで図を見せても話が逸れません。

手順2:図は全体を見せてから、一経路だけ示す

次に、筋膜のつながりを「体の地図」として示します。小冊子のSECTION 1も、上肢と下肢のつながりを図で見せ、施術前の説明に使う構成です(出典1)。

ただし、図のすべてを説明しません。「筋肉や周りの組織は隣と連続しているため、痛む場所から少し離れた場所も候補になります」と全体像を伝えたら、今回確認する一経路だけを指します。

線を指したら、「この線が原因です」ではなく、「今日はこの範囲が関係するかを調べます」と続けます。図を見る時間より、確認の方針を伝える時間を長くしないことがポイントです。

手順3:観察と仮説を分けて伝える

用意した三行メモのうち、観察と仮説を伝えます。

前に曲げる途中で骨盤の動きが小さく見えました。そこで、お尻から骨盤周りの動きが関係するかを候補にします。ただし、今の段階では候補なので、同じ動きで確かめます。

患者が聞きたいのは、難しい組織名より「なぜそこを見るのか」です。大殿筋、中殿筋、胸腰筋膜と名称を並べる前に、観察から候補へ進んだ理由を一文で伝えます。

手順4:一条件だけ変えて、同じ動作を比べる

候補部位への軽い接触や動作の誘導など、一条件だけを変えます。開始姿勢、動く方向、速度はできる範囲でそろえます。最初が立位前屈なら、確認も立位前屈です。

比較する項目は、痛みの強さだけではありません。

変化がなければ、「この条件でははっきりした変化がありませんでした。別の候補を確認します」と伝えます。変化があれば、「この場所が関係する可能性は上がりました。ほかの条件でも確認します」と伝えます。どちらの結果も評価の材料です。

手順5:分かったことと、まだ分からないことを締めにする

最後に説明を更新します。

今日分かったのは、骨盤周囲に触れた条件で、前屈時の症状の出始めが変わったことです。まだ分からないのは、どの組織の影響が大きいか、同じ反応が繰り返せるかです。次は条件を戻した場合と、別の動作でも確認します。

この締め方なら、施術者が何を判断し、何を保留したかが患者に伝わります。説明は施術前に終わるものではありません。評価の結果に合わせて書き換えるものです。

自分の説明が伝わったかは「言い直し」と再評価で確かめる

説明した直後に「分かりましたか」と聞いても、多くの場合は「はい」で終わります。理解を確かめるには、患者自身の言葉で言い直してもらいます。

質問は短くします。

試験のように聞こえないように、「私の説明が分かりにくくなかったか確認したいので」と前置きします。患者が「お尻が腰痛の原因だと分かった」と答えたら、こちらの説明が断定として伝わっています。「原因と決まったのではなく、今は関係するか調べる候補です」と修正します。

次に、動作の再評価で説明と実際が一致しているかを確かめます。説明では「同じ条件で比べる」と伝えたのに、再評価で姿勢や速度が変われば、患者も違いを判断できません。施術者自身の確認項目を決めておきます。

確認項目自問すること
基準動作最初と同じ動作を使ったか
変更条件一度に変えたのは一つか
患者の理解仮説を確定事項として受け取っていないか
結果の共有変わった点と変わらない点を両方伝えたか
次の判断候補を残す理由、下げる理由を言えるか

説明の質は、患者が筋膜の定義を覚えたかでは測りません。評価の目的を理解し、変化の有無を施術者と同じ基準で比べられるかで確かめます。

断定に聞こえる表現を、検証できる表現へ置き換える

治療家が慎重に話したつもりでも、患者には断定として届くことがあります。とくに「原因」「ゆがみ」「つながり」は、一つの答えが見つかった印象を与えやすい言葉です。

次のように置き換えます。

断定に聞こえる表現検証できる表現
腰が痛いのは、お尻が硬いからですお尻の動きが関係するか、前屈で確かめます
筋膜が引っ張って痛みを出しています離れた場所を含め、動きとの関係を候補にします
骨盤がゆがんでいます左右で目印の位置と動きに差が見られます
ここが原因ですこの条件で反応が変わったため、候補として残します
筋膜の線どおりに問題があります図の経路を手がかりに、関係する場所を調べます

置き換えの要点は、「名詞で決める」説明から「動詞で確かめる」説明へ移ることです。「原因です」「ゆがみです」と名前を付けるだけでは、次の行動が決まりません。「比べます」「確かめます」「候補にします」と伝えると、評価の目的が見えます。

説明のあとに患者の不安が強くなった場合も、言葉を見直します。「全身の筋膜が崩れている」「骨盤が動かない」といった広い表現は、患者が自分の体を壊れたものとして捉えるきっかけになり得ます。観察した範囲に戻り、「この動作では左右差が見えました」のように限定します。

医療機関での評価が優先される所見や、職種の業務範囲を超える判断についても、筋膜の説明で置き換えないことが大切です。外傷後の強い症状、急な腫脹や熱感、安静時にも続く症状、全身状態の変化などがある場合は、筋膜のつながりを詳しく説明する前に、適切な医療評価へつなぐ必要性を検討します。

まとめ:地図を見せたら、同じ動作で一緒に確かめる

筋膜のつながりを患者へ説明するときは、図を原因の一覧として使いません。患部だけでなく、どこを候補に入れるかを共有する「体の地図」として使います。

手順は次のとおりです。

  1. 患者が困る動作から始める
  2. 図は全体を見せ、今回の一経路だけを示す
  3. 観察と仮説を分けて話す
  4. 一条件だけ変え、同じ動作で比べる
  5. 分かったことと、まだ分からないことを伝える

筋膜の知識が説明の出発点になることはあります。しかし、目の前の患者についての結論は、知識だけでは決まりません。患者の動作を観察し、候補を一つ選び、同じ条件で反応を比べて、説明を更新します。

次の臨床では、図を見せる前に「観察・仮説・確認」を一行ずつ書いてください。そして説明の最後に、患者へ「今の時点で分かったことを、どう受け取りましたか」と聞いてみてください。患者の答えが、自分の説明を次に直す材料になります。

次の一歩を、無料で確かめる

LINEに登録すると、筋膜リリース徒手療法の無料動画と、セミナーの最新日程が届きます。合わなければブロックで解除できます。

LINEで無料動画を受け取るセミナーの日程を見る
出典・参考
  • 日本疼痛リハビリテーション協会『疼痛治療テンプレート』小冊子(SECTION 1):株式会社藤井翔悟事務所 内部資料
  • 筋膜(Myofascia)の定義:一般社団法人 日本整形内科学研究会 https://www.jnos.or.jp/glossary/myofacia
  • 「筋膜の概念と臨床への提言」:J-STAGE https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/48S1/0/48S1_A-36/_article/-char/ja
治療家の学びノート 編集部
株式会社藤井翔悟事務所の編集部。記事はAIの下書きを編集部が確認して公開しています。臨床判断は各自の資格と責任の範囲で行ってください。