筋膜リリースを学ぶ順番:解剖→触診→評価→手技の4段階で遠回りをなくす
筋膜リリースを学び始める人の多くは、最初に手技を覚えます。動画を見て真似をして、患者に試す。これで一部の患者は楽になりますが、楽にならない患者が出たときに理由が分かりません。ここで学びが止まります。
遠回りをなくす順番は、解剖→触診→評価→手技です。この順番で進むと、効かなかったときに「どの段階が足りないか」を自分で特定できます。
第1段階:解剖。筋の走行と起始停止を「言える」ようにする
藤井翔悟の膝痛の指導動画では、受講者に「大腿直筋の走行をまず知らないとダメ」と繰り返し伝え、その場で大腿直筋、膝蓋腱、その下にある中間広筋を順に確認させています(出典1)。手技の前に、対象の筋が「どこから始まり、どこに付き、どう走るか」を言葉で説明できる状態にする、というのが第1段階です。
やり方は難しくありません。同じ動画で講師は「丸暗記してもあかん」「まず1語ずつ調べる。AIに聞いてもいい」と言っています。覚えるのではなく、調べて説明できることを目標にしてください。
最初に押さえる範囲
全身を一度にやろうとすると続きません。自分の患者で多い部位から、次の順で広げます。
| 部位 | 最初に言えるようにする筋 |
|---|---|
| 膝 | 大腿直筋、中間広筋、内側広筋、外側広筋、膝窩筋、後脛骨筋 |
| 腰・骨盤 | 大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋、多裂筋、腸腰筋 |
| 肩 | 棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋、前鋸筋、小胸筋 |
1部位につき5〜6筋で十分です。走行と起始停止を自分の言葉で説明できたら次へ進みます。
第2段階:触診。「硬いところ」と「正常なところ」の差を手で分ける
解剖が言えても、手で見つけられなければ使えません。膝痛の動画では、後脛骨筋について「内果の骨の真ん中から下をなぞると、グリッとした腱がある。そこを持ってグッとした時にここがふわっと緩む」と、触る手順と手応えを言葉にしています(出典1)。触診の到達点は、硬さの差を手で分けて、言葉で説明できることです。
自分の触診を確かめる方法
- 同じ筋を左右で触り、硬さの差を言葉にする(「右の方が張っていて、押すと抵抗が強い」など)
- 相手に「ここが硬い」と伝え、相手の自覚と一致するかを聞く
- 同僚や勉強会の仲間に同じ場所を触ってもらい、同じ所見になるかを確かめる
3つ目が最も効きます。一人で練習すると、自分の思い込みに気づけません。
第3段階:評価。痛みが「どの範囲で、なぜ出るか」を絞る
評価は、手技をどこに使うかを決める段階です。膝痛の動画では、講師は2種類の痛みを分けて説明しています(出典1)。
- 可動域の途中だけで痛みが出る → 大腿骨と膝蓋骨が滑る途中で詰まっている。膝蓋骨周囲の問題を先に見る
- ある角度までは大丈夫で、そこから先がずっと痛い → 短縮した筋が一定以上伸ばされて痛みを出している。筋の長さの問題として見る
同じ「膝が痛い」でも、どの範囲で出るかで見る場所が変わります。仙腸関節の動画でも、手技の前に「ASIS(上前腸骨棘)の高さが揃っているか」を見て、縮こまっている側の可動性が悪いことが多い、と順番を説明しています(出典2)。
評価の段階で身につけるのは、手技ではなく「どこを見れば原因が絞れるか」という問いの立て方です。
第4段階:手技。評価で絞った場所に、緩む手応えを確かめながら使う
ここで初めて手技です。順番を守って進んだ人は、手技の効き方が分かります。緩まなければ、第1〜3段階のどこかが外れています。
手技で確かめることは2つです。
- 触っている場所が、評価で絞った場所と一致しているか
- 緩んだ手応えが、自分の手と相手の自覚の両方で確認できるか
膝痛の動画では、講師は受講者に「分からんかったら、もっと手を突っ込んで内側に行こう」と、手応えが得られるまで位置を修正させています(出典1)。手応えが出るまで位置を変えるのが手技の練習であり、同じ動きを繰り返すことではありません。
順番を守ると、効かなかったときに戻る場所が分かる
4段階を表にまとめます。
| 段階 | 到達点 | 効かなかったときの戻り方 |
|---|---|---|
| 解剖 | 走行と起始停止を説明できる | 対象の筋を言えなければここに戻る |
| 触診 | 硬さの差を手で分けて言葉にできる | 硬さが分からなければここに戻る |
| 評価 | 痛みの範囲から原因を絞れる | 見る場所が決まらなければここに戻る |
| 手技 | 緩む手応えを両者で確認できる | 位置を変えても緩まなければ評価に戻る |
手技から始めた人が伸び悩むのは、戻る場所がないからです。順番を持っている人は、効かない患者に当たるたびに学びが増えます。
独学で足りない部分は、人に触ってもらう
第1段階は独学で進みます。第2段階以降は、自分の手を誰かに直してもらう場面が要ります。勉強会でも、セミナーでも、同僚でも構いません。当社のセミナーもその選択肢の1つです。まず無料動画で、解剖と評価の考え方が自分に合うかを確かめてください。
- 藤井翔悟「膝の痛み」指導動画の文字起こし(大腿直筋・中間広筋・後脛骨筋の触診と評価の説明):株式会社藤井翔悟事務所 内部資料
- 藤井翔悟「仙腸関節」解説動画の文字起こし(大腿筋膜張筋と仙腸関節の可動性の関係、ASISの高さの確認):株式会社藤井翔悟事務所 内部資料