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膝の痛みを可動域の途中で評価する方法:出る区間・続く区間を分けて記録する

2026-11-04 | 用語解説

膝の痛みを評価するとき、最大屈曲角度だけを記録しても、次に何を確かめるかは決まりません。大切なのは、痛みが可動域のどこで出始め、どの区間で続き、どこで変わるかを記録することです。

可動域の途中だけで出る痛みと、ある角度から終末域まで続く痛みでは、検討する仮説が変わります。ただし、痛みの区間だけで原因を決めることはできません。区間はあくまで仮説の入口です。同じ動作を同じ条件で再現し、介入前後の反応を比べて、仮説を残すか捨てるかを判断します。

この記事では、臨床で使える記録の取り方を、膝屈曲の例で整理します。対象は、膝の評価に迷いやすい理学療法士・柔道整復師・鍼灸師・整体師です。

膝痛評価で最初に固定するのは、最大角度より「痛みの出方」

関節可動域は、関節が動く範囲を角度で表す指標です。標準的な測定法は、基本軸・移動軸・測定肢位をそろえ、角度計で記録します。日本理学療法学会連合も、3医学会が公表した測定法を標準的評価法として案内しています(出典3)。

角度は必要です。しかし、疼痛の臨床では角度だけでは足りません。同じ「膝屈曲に痛みがある」でも、次のような違いがあるからです。

この違いを残さずに「屈曲時痛あり」とだけ書くと、再評価で同じ現象を見ているか判断できません。最大角度が同じでも、痛みの出始めが変わっている可能性があります。反対に、最大角度が広がっても、痛みの区間は変わっていないかもしれません。

最初に固定したいのは、次の項目です。

記録項目書き方の例目的
動作背臥位での自動膝屈曲再評価の条件をそろえる
痛みの部位膝前面、膝蓋骨内側縁付近対象者の指差しで確認する
出始め屈曲途中から痛みが始まる位置を残す
続く区間途中の狭い区間のみ一過性か持続性かを分ける
終わり方さらに屈曲すると弱くなる変化点を残す
動作速度ゆっくり速度による違いを減らす
荷重条件非荷重位再現条件を固定する

角度計が使える環境では、出始めと終わりの角度も記録します。使えない場面では、「屈曲の前半・中盤・終盤」のように区間で残しても構いません。大事なのは、次の再評価で同じ条件を再現できることです。

「途中だけ」と「ある角度から続く」を分ける理由

藤井翔悟の膝痛の指導動画では、膝屈曲時の痛みを二つの出方に分けています(出典1)。

一つは、可動域の途中だけで痛みが出るパターンです。動画では、大腿骨と膝蓋骨が動く途中の滑りに着目し、膝蓋骨周囲の問題を検討しています。

もう一つは、ある角度までは問題がなく、それ以降で痛みが続くパターンです。こちらは、筋が一定以上伸ばされたときの反応として捉え、筋の短縮や張力の影響を検討しています。

ここで重要なのは、「途中なら膝蓋大腿関節」「終盤なら筋」と即決することではありません。動画が示しているのは、痛みの出方から次の検査候補を絞る臨床推論です。区間だけで病態や原因組織を確定する話ではありません。

可動域途中の痛みを見たときは、関節運動に伴って位置関係が変わる構造を候補に置きます。膝蓋骨周囲を検討するなら、膝蓋骨の可動性、圧痛部位、運動中の軌道、自動運動と他動運動の差などを追加します。

ある角度から終末域まで続く痛みを見たときは、その区間で伸張や圧縮が増える組織を候補に置きます。筋の影響を検討するなら、股関節や足関節の肢位を変えたときに痛みの出始めが変わるか、収縮と伸張のどちらで再現しやすいかを追加します。

つまり、痛みの区間は「答え」ではなく、次の検査を選ぶ分岐点です。

痛みの出方最初の仮説次に確かめること
途中の限られた区間で出る動きの途中で位置関係が変わる構造の影響膝蓋骨周囲の可動性、軌道、圧痛、自動・他動差
ある角度から終末域まで続く伸張または圧縮が増える組織の影響隣接関節の肢位、筋収縮、伸張条件による変化
全域で続く刺激性が高い、または条件設定が広すぎる可能性負荷、速度、荷重条件を下げて再確認
日によって区間が大きく変わる再現条件または症状の変動要因時間帯、直前の活動、腫脹、熱感、荷重量

この表は診断基準ではありません。検査の順番を決めるための整理表です。所見が一致しなければ、最初の仮説に固執せず別の候補へ移ります。

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実務手順:評価、仮説、押圧、再評価を同じ条件で行う

小冊子『疼痛治療テンプレート』のSECTION 2では、疼痛誘発動作を「評価→押圧→再評価」の流れで整理しています(出典2)。最初に痛みが出る動作と可動域を規定し、候補部位を押圧した状態で同じ動作を行い、反応を比較する方法です。

臨床で扱うときは、反応が変わったことと、原因が確定したことを分けて考える必要があります。押圧によって運動の仕方、注意の向き、安心感、速度なども変わる可能性があるためです。ここでは、押圧で反応が変わった部位を「追加検査の優先度が上がった候補」として扱います。

手順は次のとおりです。

1. 基準動作を一つに決める

まず、痛みを安定して再現できる動作を一つ選びます。仮に膝屈曲で確認するなら、背臥位か腹臥位か、自動か他動か、荷重か非荷重かを決めます。

一度の評価で複数条件を混ぜないことが大切です。最初は背臥位の自動膝屈曲、再評価は座位の他動膝屈曲では、変化の理由を分けられません。

痛みを強く再現する必要はありません。評価に必要なのは、対象者と施術者が同じ変化点を認識できる程度の再現性です。強い痛み、急な腫脹、熱感、外傷後の荷重困難などがある場合は、徒手的な仮説検証を優先せず、適切な医療評価につなげます。

2. 出始め、続く区間、終わり方を言葉にする

対象者に「痛いですか」とだけ聞くと、返答は「はい・いいえ」で終わります。代わりに、次のように確認します。

施術者の観察も同時に残します。痛みが出た瞬間に動作速度が変わる、股関節が外旋する、骨盤が動く、踵の軌道がずれる、といった代償です。痛みの申告と代償が始まる位置がそろうかを見ます。

3. 痛みの区間から候補を一つ選ぶ

途中だけで痛むなら、まず動きの途中で滑走や接触条件が変わる構造を候補にします。ある角度から続くなら、伸張や圧縮が増える構造を候補にします。

候補は一度に一つです。膝蓋骨周囲、大腿四頭筋、足部、股関節を同時に操作すると、何が反応に関係したか分からなくなります。

また、触れて硬い場所を先に原因と決めないようにします。硬さは所見の一つですが、基準動作との関係は別に確かめる必要があります。

4. 一条件だけ変えて再評価する

候補部位への軽い押圧、膝蓋骨の誘導、隣接関節の肢位変更など、一つの条件だけを変えます。そのうえで、同じ開始肢位、同じ速度、同じ運動方向で基準動作を繰り返します。

見るのは痛みの強さだけではありません。

反応が変わらなければ、その候補の優先度を下げます。反応が変われば、同じ条件でもう一度再現できるか確認します。一度の変化だけで結論にせず、条件を戻したときに元の反応へ戻るかも見ると、仮説の確からしさを検討しやすくなります。

記録は「角度」ではなく「区間の変化」まで残す

再評価でよくある失敗は、「少し楽」「動きやすい」という感想だけで終えることです。感想は大切ですが、次回に同じ評価を再現できません。

最低限、基準動作、痛みの部位、出始め、続く区間、変更した一条件、再評価の結果を一組で残します。

項目初回評価条件変更後
基準動作背臥位、自動膝屈曲、ゆっくり同じ
痛みの部位膝前面膝前面
出始め中盤終盤へ移動
続く区間中盤の限られた区間狭くなった
変更条件なし膝蓋骨周囲へ軽い誘導
代償股関節が外旋外旋が小さくなった
解釈仮説未設定膝蓋骨周囲を追加検査する

数値を使うなら、同じ尺度を使います。ただし、痛みの点数だけに寄せないでください。痛みの点数が同じでも、出始めが遅くなったり、痛む区間が短くなったりすることがあります。

反対に、点数が下がっても、施術者が動作を誘導したため速度が落ちただけかもしれません。条件の違いを記録しておけば、「組織への操作で変わった」のか、「動作条件が変わった」のかを次に検討できます。

判定を急がないために、評価の限界と安全確認を先に置く

可動域途中の痛みは、評価の手がかりになります。しかし、それだけで原因組織や診断名は決まりません。膝の痛みは、関節、筋、腱、靱帯、半月板、神経、炎症性変化など、複数の要素が関係し得ます。既往歴、受傷機転、腫脹、熱感、荷重能力、ロッキング感、不安定感などを合わせて判断します。

とくに次のような状況では、区間評価を深める前に医療機関での評価が必要かを検討します。

職種ごとの業務範囲も守ります。触診や動作観察から得た仮説を、画像所見や医学的診断の代わりにしないことが大切です。

もう一つの限界は、評価そのものが症状を変えることです。何度も終末域まで動かせば、慣れや刺激の蓄積で反応が変わります。再評価の回数を必要な範囲に絞り、動作速度と休息をそろえます。変化が小さい場合は、その場で結論を急がず、次回に同じ条件で再確認する選択もあります。

自分の評価が再現できるかを確かめる

この評価法を身につけるには、正しい答えを覚えるより、同じ現象をもう一度拾えるかを練習します。

まず、同じ対象者の同じ動作を、少し時間を置いて再評価します。最初の記録を見ずに、痛みの出始めと終わり方を書きます。後で二つの記録を比べます。

次に、同僚にも同じ基準動作を評価してもらいます。施術者同士で先に相談せず、それぞれが次の項目を書きます。

一致しなかった項目は、観察力の差とは限りません。「ゆっくり」の速度が違う、骨盤を固定する位置が違う、痛みの場所の聞き方が違う、といった条件設定の差かもしれません。条件をそろえてもう一度行い、一致度が上がるかを見ます。

最後に、仮説と結果を分けて記録します。

この書き分けができると、「そう見えたこと」と「そう考えたこと」が混ざりません。別の施術者も、記録を読んで同じ検証を繰り返せます。

まとめ:痛む角度ではなく、痛みの区間を次の検査につなげる

膝痛の可動域評価では、最大角度に加えて、痛みの出始め、続く区間、終わり方を記録します。

途中だけの痛みと、ある角度から終末域まで続く痛みを分けると、次に検討する構造の仮説を整理しやすくなります。ただし、区間だけで原因は決めません。基準動作を固定し、一条件だけ変え、同じ動作で再評価します。

評価の質は、珍しい検査を知っているかではなく、同じ現象を再現し、仮説と結果を分けて残せるかで変わります。

まず次の膝症例で、「屈曲時痛あり」と書く代わりに、出始め・続く区間・終わり方の三つを書いてみてください。その記録が、次に何を確かめるかを決める材料になります。

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出典・参考
  • 藤井翔悟「膝の痛み」指導動画の文字起こし(可動域途中の痛みと一定角度以降の痛みを分ける評価):株式会社藤井翔悟事務所 内部資料
  • 日本疼痛リハビリテーション協会『疼痛治療テンプレート』小冊子(SECTION 2):株式会社藤井翔悟事務所 内部資料
  • 関節可動域評価指針:一般社団法人 日本理学療法学会連合 https://www.jspt.or.jp/rom/
  • 関節可動域/ROM:厚生労働省 e-ヘルスネット https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/exercise/ys-060.html
治療家の学びノート 編集部
株式会社藤井翔悟事務所の編集部。記事はAIの下書きを編集部が確認して公開しています。臨床判断は各自の資格と責任の範囲で行ってください。